睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群・睡眠呼吸障害とは

眠中に繰り返し呼吸が止まったり弱くなったりする病気です。
呼吸をしようという努力(呼吸運動)はあっても気道が塞がることで空気の流れが妨げられ(閉塞性無呼吸)、適切な酸素の取り込みができなくなります。
呼吸運動そのものが不十分となる、心不全や、脳血管障害、神経筋障害に伴う病態(中枢性無呼吸)もあります。
いずれも、大きないびきを伴うことも多く、十分な酸素が取り込まれないために、眠りが浅くなり、夜中に何度も目が覚めたりして睡眠の質の低下を来します。また、著しい睡眠不足によって、朝すっきり起きられない、十分寝ても日中も眠い、といった症状の原因となります。
またその影響は睡眠だけにとどまらず、高血圧、糖尿病を含むメタボリック症候群の悪化と関連することも報告されています。
肥満や顎の小さい方、高齢男性、閉経後の女性に多いことが知られていますが、お子さんでも扁桃腺が大きいことで気道が狭くなって生じることもあり、その原因は多様で、誰でも生じる可能性があります。アレルギー性鼻炎などで症状が悪くなる方も多いです。
治療には経鼻的持続陽圧呼吸法 (CPAP) やマウスピースが用いられますが、基礎疾患や病状、体型や顎の形態、年齢を考慮して治療法を選択する必要があります。
重症な睡眠呼吸障害は、心血管系合併症や死亡率増加のリスク、認知機能低下の要因となることも知られており、眠気などの症状が軽くても治療が有用である場合も少なくありません。睡眠時に限らず、終日、呼吸状態の不安定を生じる疾患もあります。
ご本人に眠気などはっきりした自覚症状がない場合も少なくありません。ご家族からいびきや無呼吸の指摘を受けたら、一度受診をして評価を受けることをおすすめします。
当院では、一般に対応が難しいと考えられている心不全などの重篤な循環器疾患や呼吸器疾患を抱えられた患者さんの睡眠時無呼吸に対しても、適切に対応する体制を整えています。睡眠時無呼吸とご自分の病気との関連や治療に対する影響など不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群・(睡眠)呼吸障害の検査

当院では外来で検査機器を貸出し、睡眠時無呼吸症候群の初期診断のための検査を行っています。ご自宅で就寝中に検査機器を装着し、睡眠中の状態を記録します。以下の3種類の検査を行っており、症状やお持ちの病気を考慮して適切な検査をご案内します。

パルスオキシメーター

パルスオキシメーター
パルスオキシメトリー検査は、(1)血液中の酸素飽和度を測定します。 睡眠中に呼吸が止まることがあると、一時的に血液中の酸素飽和度が低下します。この状態をひと晩、指先に装着したセンサーで記録します。検査結果から睡眠時無呼吸症候群の初期診断が可能となります。
日中活動中の息切れ症状など、心疾患や呼吸器疾患など、持続性低酸素血症や、運動時の低酸素血症の評価にも有用です。その場合は24時間の装着での評価を行います。

簡易型睡眠ポリグラフィ検査:スマートウオッチ

簡易型睡眠ポリグラフィ検査:スマートウオッチ
上記検査で評価できる (1)血中酸素濃度 に加え、(2)イビキの有無(3)呼吸運動と気流の状態(4)睡眠中の体の向き を測定して分析を行い、CPAP他治療介入が必要か、どのような治療が適しているかを見極める精査が必要かどうかを診断します。

検査結果に応じて、睡眠脳波の評価を含むより精密な検査(終夜睡眠ポリグラフィ検査)が必要な可能性があります。

その場合、
1泊入院での精密検査が一般的です。近隣病院でのご入院検査を紹介、ご案内いたします。
入院のご都合がつかない、などご事情があれば、ご自宅で脳波の測定も可能な機器で代用できる場合もあります(下記)。

終夜睡眠ポリグラフィ検査(PSG):スリーププロファイラー

終夜睡眠ポリグラフィ検査(PSG):スリーププロファイラー
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)は睡眠時無呼吸症候群の疑いが強い方に対して、最終的な確定診断検査として行います。すでに治療を受けておいでの方の効果判定や治療修正のための情報収集にも有用です。
上記検査で評価できる (1)血中酸素濃度(2)イビキの有無(3)呼吸運動と気流の状態(4)睡眠中の体の向き に加え、(5)脳波測定 を行うことで、睡眠のステージと質を正確に把握し、呼吸状態との関連を評価することができます。
通常この検査は検査可能な施設での1泊入院が必要ですが、当院では在宅での検査も可能です。
簡易検査と同様に装置をお貸し出しし、ご自宅で就寝前に自身でセンサーを装着していただく必要がありますが、操作説明は貸出の際に担当検査技師がしっかり行い、ご自宅でリラックスした状態で検査を受けていただくことが可能です。
PSGは、脳波や呼吸などの複数のセンサーで睡眠中の色々な生体信号を同時記録します。それにより、いびきや無呼吸が起こった際の身体の酸素飽和度の低下、睡眠の質への影響や心拍数の変化などを評価することが出来ます。
当院では、このデータに専門技師が詳細に目を通して重症度を判定し、それを元に患者さんの状態に適した治療を検討、提案、状態を観て修正しています。

睡眠時無呼吸症候群・(睡眠)呼吸障害の治療選択肢

CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)

睡眠時無呼吸症候群の治療の第一選択とされています。
鼻(+口)に装着したマスクを介して、専用の機械で圧力をかけた空気をご自身の呼吸リズムに合わせて気道に送り、気道を拡げることによって睡眠中の気道閉塞を解除する治療法です。
これにより、いびきや、気道閉塞に起因する無呼吸・低呼吸を改善することができます。
CPAPは、CPAP機器本体と空気を送るチューブ、鼻マスクからなり、睡眠中に装着します。空気を送る圧力や機器は、患者さんの病状に応じて医師の処方により設定されます。治療効果を最大に、また患者さんの負担を最小にするためは、機器、マスク、そして用いる圧力が適切に設定されていることが極めて重要です。
当院では、使用方法、マスクの調整などは専門の医療スタッフが丁寧に説明・対応します。
また治療開始後も、遠隔管理システムにより使用データ(使用状況と無呼吸の改善具合を知ることができます)を確認し、定期受診の際にその状況と効果を説明することで、効果的に安心して使用いただけるようサポートいたします。

マウスピース(OA:口腔内装置治療)

CPAP治療に向かない、合わない方や、保険診療適応にならない軽症の方などの治療選択肢となります。自宅ではCPAPを使っている方が旅行や出張などの外泊時に用いることも可能です。
マウスピースは専門知識を有する歯科医師による作成が望ましく、その後の治療効果の確認は医師が行う必要があるため、医師-歯科医師間のスムーズな連携がとれていることが重要です。
当院からは九州大学病院 口腔総合診療科を中心に、専門の歯科の先生に紹介を行います。
入れ歯や、抜歯後の状態、歯周病や虫歯の治療の状況などによって、適応とならないこともあります。
基本的に、健康保険の適応(3割負担で1万円程度)となります。また、保険外治療にはなりますが、使いやすさを重視した装置や歯の状況が悪くても使用できる装置など患者さんの要望に応じたご提案が可能です。

扁桃摘出手術

主にお子さんや、扁桃腺炎を繰り返す患者さんなど、扁桃腺の腫大が主たる原因となっている場合に適応となります。専門の耳鼻科の先生に紹介いたします。

リハビリトレーニング(クチトレ)

睡眠時無呼吸の原因となる喉や口の周りの筋力の低下がある場合、日々のトレーニングで、改善が得られる場合があります。
適切なトレーニング器具、方法を知って、実施・継続することが効果的な治療のポイントです。
当院では丁寧な指導や管理が可能な体制を整えています。専門のインストラクターによる指導が可能です。

心不全などの循環器疾患、肺気腫やCOPDなどの呼吸器疾患、神経・筋疾患などの基礎疾患がある方は、上記の治療だけで十分な効果が得られないことがあります。

その場合には、病状に応じて以下の適応検討、治療・管理を行います。

在宅酸素療法の併用

必要十分な酸素化が得られない場合。

人工呼吸器管理

呼吸運動・呼吸機能そのものの不全がある場合。

CPAP療法の費用について

CPAPレンタルには継続しての通院が必要になります。治療(CPAP使用状況と効果)が安定すれば、2〜3ヶ月に1度の通院にすることも可能です。
毎月の通院に比べて、時間、費用ともに患者さんのご負担が軽減されます。
保険適用の場合(3割負担) 保険適用外の場合
1ヶ月 5,000円 程度/月 15,000円 程度
※専門検査数値 AHI(無呼吸低呼吸指数)
20/Hr以下の方は保険適用外になります。
3ヶ月 遠隔モニタリング有 11,950円 程度